マドリードのヴアルデミンゴメス工場のように、流動床式〔本書二八頁参照〕のボイラーにごみ燃焼による熱を送りこむという方法が用いられているところもある。 一年間に排出される三五万トンごみ燃料の製造経路は、コンポスト生産の一連の流れに組みこむこともできる。
分別した廃棄物はその特性に応じてエネルギーに変えられたり、腐植土の肥料用に振りわけられるというわけだ。 ただし、コンポストとごみ燃料生産を平行して行うには相当な費用がかかるため、これまでなかなか実行が難しかった。
さまざまな試みがなされてきたが、何年かたつと中断されるケースが大半である。 コンポストとごみ燃料が安定的かつ同時に生産されるようになれば、この分野の「ごみ利用」が頭打ちだと言われることもなくなるだろう。
バイオガス――燃料として、クリーンなガソリンとして食品、野菜くず、紙類といったごみは、生物分解性物質と呼ばれ、生物学的な分解を経てバイオガスを発生する。 発生したガスは廃棄物の塊のなかで四方に拡散し、外へと漏れだす。
このガスの主成分はメタンと二酸化炭素で、地球温暖化の原因とされる温室効果を引きおこすものだ。 また、ガスのなかには卵の腐った臭いで知られる硫化水素も含まれている。
安全と環境保護のため、廃棄物処理場の周辺にはバイオガスを吸入する装置が設置されており、フレア装置の出口でガスを集め、排ガス燃焼装置で燃焼させるシステムがとられている。 こうしたシステムに異を唱える人たちは、燃焼させた炎でいたずらに大気を暖めるより、このガスを有効活用する方が得策だという考えを示している。

有機廃棄物からガスが発生するのは、ごみを放置してから一週間後である。 ガスがどの程度発生するかは、廃棄物の成分と生物分解性度によって異なり、廃棄物内のバクテリアの数と発育条件によって決まる。
推定では、一トンの有機物から二四〇立方メートルのバイオガスが発生し、発生したガスの四分の三が発散するにはほぼ二〇年かかるとされている。 というのも、バイオガスの発生に欠かせないバクテリアは、腐敗しやすい廃棄物ならば二〜三年という比較的短時間で分解を行うが、それ以外の有機物を消化するには何年もの時間がかかるからである。
また、バクテリアは酸素に弱く、湿気やよどんだ空気を嫌うといった非常に気まぐれな性質をもっている。 バイオガスの回収は、埋め立てが完了している最終処分場と、埋め立て途中の処分場の二カ所で行われている。
埋め立てが完了している場所では、井戸のように深い穴をいくつか堀り、それらを水平の管で結ぶ方法で回収を行っている。 一方、埋め立て途中の処分場では、ごみの堆積量に応じてコンクリート製の導管を垂直に継ぎたし、パイプライン状に接続してバイオガスを回収している。
ヨーロッパにおいて、はじめて石炭の代わりに処分場から発生するバイオガスをエネルギーとして利用したのは、イギリスの煉瓦製造工場で、一九七〇年代のことである。 そして今日、処分場から発生するガスの採取技術がめざましい発展をとげている。
一九九三年には、ドイツやイギリスを中心に、都合二〇〇カ所の処分場からおよそ五〇万トンの石油に匹敵するバイオガスが回収された。 しかし、ごみの処分場から採取されるガスを将来も期待するのは難しい状況にある。
というのも、これらの処分場では西暦二〇〇〇年以降、腐敗しない不活性廃棄物や最終廃棄物の占める割合が高くなり、ガスを発生しなくなるからだ。 それでも、現在埋め立てられているごみは、あと二五年ほどガスを発生し続けるだろう。

バイオガスの主成分がメタンと二酸化炭素であることは先に述べた。 そのメタンガスを精製すると、天然ガスに近いものができる。
これがボイラーで熱に変えられ、たとえばセメント工場や煉瓦工場にエネルギーとして供給されている。 デンマークやアメリカでは、熱供給システムに利用され、アメリカの場合は、二一〇の処分場から回収されたバイオガスが活用されている。
また、メタンガスをさらに精製してガス会社に転売するケースもある。 ロサンジエルス郊外にあるパーロス・ヴァーデスの処分場では、一九七五年以来バイオガスの採取が行われており、二〇〇〇万トンのごみの山から五万立方メートルのガスが発生している。
ここで精製、圧縮されたガスは地方のガス会社に買いとられ、三五〇〇戸の家庭に供給されている。 現在では、バイオガスが電力に変えられるようになっている。
イギリスのグラスゴーにほど近いグリーンゲアーズの巨大な処分場には、四メガワットの電力を生産する設備があり、四〇〇〇戸の家庭に電気を送っている。 さらに、メタンガスが気化燃料として利用されている場所もある。
二五万人が居住するニュージーランドのクライストチャーチでは、当地の処分場で採取されたバイオガスを精製した後、これを回収し、気化燃料として一〇〇台分の自動車燃料に使用している。 メタンガスは燃料のなかでも環境にやさしいクリーンな燃料であることから、環境保護に配慮した有効な方法と言える。
しかし、環境に気を配ったとしても、バイオガスの精製、圧縮の作業には莫大な経費がかかり、これを日常的な燃料として活用できるのは当分先になりそうである。 バイオガスを集め、電力に変換するには、最低でも年間二〇万トンの生物分解性廃棄物を埋め立てる必要がある。
大規模なごみ処分場から採取されたガスなら値段が安く、量も豊富であることから比較的活用しやすい。 メタンは工場でも製造が可能である。

メタンを発生させるには、生ごみの発酵可能な部分を空気に触れさせないようにして、連続的に発酵させればよい。 製造方法は次のようになる。
有機物を粉砕し、湿気を与えてかき混ぜたあと、温度を三五―四〇度に設定して、大きな蒸解釜に入れる。 それを二週間ほど置くと、変質作用によって、五五%程度のメタンを含むバイオガスができあがる。
そして残った有機物を二―四週間熟成させれば、堆肥として利用できるようになる。 以前、この方法が固形ごみの処理に応用されたことがある。
一九七〇年代のことで、フロリダにあるポンパノ・ピーチの泥を殺菌、脱臭、安定させるのが目的であった。 ヨーロッパにもこの手の施設が三〇ほどある。
そのうちの半数はドイツ、デンマークのもので、フランスにもアミアン〔フランス北西部、ソンム県の県都〕に一つ設置されている。 いずれも大きな発酵装置に家畜の排地物、有機廃棄物を含んだ混合物を混ぜあわせる方法である。
これは広い敷地を必要とせず、事実上、公害を引きおこすことがないから、魅力的な方法かもしれない。 しかし、残留物〔有機物堆肥〕の販売が難しいだけに、この方法でも相当な経費負担となるのが難点、だ。
廃棄物から精製した石油で車が走る!使い古しの油からディーゼル車に使われる軽油「バイオディーゼル」を作りだせることはよく知られている。 オーストリアのスタイアーマルク州で使われているパスの何台かは、レストランから回収した廃油を燃料〔エステル化燃料と呼ばれる〕にしている。
また、廃プラスチックから石油を精製することもできる。 ドイツでは、石炭からガソリンを精製する第二次世界大戦当時の技術を応用して、廃プラスチックを高分子化合物に作りかえた。

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